大阪市立美術館

「館蔵 中国書画名品展」

会期
平成17年(2005)1月5日(水)~2月13日(日)
観覧料

一般500円(400円)、大学・高校生300円(200円)  中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方、大阪市内在住の65歳以上の方は無料〔要証明(原本に限る)〕   ※カッコ内は、20名以上の団体料金

展覧会概要

今回の特別陳列では、本館収蔵作品のなかから東洋紡績株式会社社長を務めた阿部房次郎氏が菟集した中国書画“阿部コレクション”を中心に、中国拓本に造詣の深かった岡村蓉二郎氏旧蔵の中国金石拓本“師古齋コレクション”を加えた作品など約100件を精選して陳列します。  阿部コレクションは、東洋紡績株式会社社長を務めた阿部房次郎氏(1868-1937)が大正時代以降に菟集した中国書画160件からなります。当時、中国では辛亥革命(1911)が起こって清朝が崩壊するという混乱のなか多くの文物が海外に流出しました。中国の美術に畏敬の念を抱いていた阿部氏は、貴重な書画が灰燼に帰し、あるいは散乱してしまうのを惜しみ、激務の暇に多大な財力を費やして世界に誇るべき一大コレクションを作り上げました。そしてこれらを一点も散逸することなく博物館に寄贈するという遺志を継いだ令息の孝次郎氏によって、昭和18年(1943)に本館の所蔵となりました。  このほか北宋時代の書家である米芾【べいふつ】筆の重要文化財「草書四帖【そうしょしじょう】」などとともに、中国書画は本館収蔵品の中核のひとつを成しており、今回の特別陳列では、その精品を一括して展示します。  また師古齋コレクションは、中国拓本に造詣の深かった岡村蓉次郎氏(1910-1991、号を商石)が昭和10年(1935)ごろから菟集した中国金石拓本450件で、殷周から唐に至る金分・墓碑・墓誌・造像銘など多彩な内容にわたっています。自らの拓法を研究した岡村氏の旧蔵品は、墨法・拓法に優れた旧拓を多く含み。美術的・歴史的資料としての価値に富んでいます。  なお、1月15日(土)・22日(土)・29日(土)午後2時から会場内で「ギャラリートーク」を開催し、当館学芸員が展示作品の解説を行います。

主な出展作品

木蓮・木瓜図【もくれん・ぼけず】

清・惲寿平【うんじゅへい】 紙本着色 27.5cm×43.0cm 本館蔵(阿部コレクション)

惲寿平(1633-1690)は、南田・白雲外史【なんでん・はくうんがいし】と号しました。福建で明朝回復運動に参加し、帰郷後はもっぱら画を売って生計を立てました。草虫画の伝統のある武進【ぶしん】(江蘇省常州)の出身で、山水なども画きましたが、花卉を最も得意とし、北宋以来の輪郭線を用いない”没骨法【もっこつほう】”と呼ばれる画法を復活させました。写生に優れ、艶やかな色彩を用いて、清新な感覚に満ちた作品を画きました。この作品は木蓮の胡粉の白とそれに寄り添う木瓜の朱の対比が印象的で、枝や葉は淡く画いて可憐な花弁をいっそう引き立てています。「朱姿粉黛、鉄骨金心」の題はその姿を喩えています。次いで「戯れに宋人の小幀を臨す」と記していることから、宋代の画法を意識していることがわかります。

江山楼観図【こうざんろうかんず】

北宋・燕文貴【えんぶんき】 紙本墨画淡彩 32.0cm×161.0cm 本館蔵(阿部コレクション)

広々とした水辺から峻厳な山容へと展開する壮大な山水景の中に、気象の変化に対応し、細く険しい道をたどり、また日々の生業にいそしむ人々の営みを画いています。北宋時代太宗朝に宮廷画家として活躍した燕文貴は、それまでの華北山水画の流れとは別に、独自の様式を完成させました。いわゆる”燕家の景致”と呼ばれる、樹木や人物を細密に画き、これにより大きな空間を形成する画風で一家を成したと伝えられます。本図には各所に江南山水画の要素が認められ、燕文貴という画家が、独学ながら華北山水と江南山水とを融合させた様式を試みたと言えましょう。

開通褒斜道刻石【かいつうほうやどうこくせき】

後漢・永平9年(66) 紙本墨拓 142cm×272cm 本館蔵(師古斎コレクション)

漢の都長安が置かれた関中から蜀(四川)へ通ずる険路のひとつが、斜谷【やこく】から褒谷【ほうこく】をぬけて漢中【かんちゅう】を経由する褒斜道【ほうやどう】です。後漢の永平6年(63)、明帝の命を受けた漢中の太守【たいしゅ】(長官)鄐【ちく】君は、258里あるこの道に桟橋を架け、石門と呼ばれるトンネルを開くなど、囚人2,690人を用い、3年をかけて車両が通れる道を整備しました。この開通を記念し、鄐君らの功績を讃えたのがこの石刻で、石門に近い褒河の西岸の崖にほられました。隷書特有の波磔【はたく】(横画の終筆を右にはねあげる筆法)が発達する以前の古隷と呼ばれる書体で、文字の大小はさまざま、字間行間を詰めた天然古朴な書風です。

重要文化財

元日帖【がんじつじょう】

北宋・米芾【べいふつ】 紙本墨書 25.2cm×40.5cm 本館蔵(武居巧氏寄贈)

米芾(1051-1107)は蔡襄【さいじょう】・蘇軾【そしょく】・黄庭堅【こうていけん】とともに宋の四大家と称される書家で、徽宗【きそう】の側近に仕えて書画の鑑定にもあたりました。その書は始め唐の顔真卿【がんしんけい】や褚遂良【ちょすいりょう】を学び、のち魏・晋に遡って研究をすすめ、とくに行書・草書に多くの名品を残しました。この作品は友人にあてた書状で、草書四帖の一点として現在伝わっています。合装された「吾友帖」などとともに、その内容からは彼の書作に対する姿勢が窺えます。  『元日、明窓のもとに香を焚き、西北のかたわが友に向かっている。その思いを知ってほしい。今は唐の太宗や王献之の作品を展【ひろ】げ閲【み】て、他の書には及んでいない。数本を臨書したが、できあがらない。まことに真蹟を前にすると、その気?は人をおそれしめる…』

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