大阪市立美術館

受贈記念 田原コレクション 色鍋島・藍鍋島

会期

平成23年(2011)8月2日(火)~9月4日(日)
休館:月曜日

観覧料

一般500円(400円) 高大生400円(300円)
※ 中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方、大阪市内在住の65歳以上の方は無料[要証明]
※ カッコ内は20名以上の団体料金

展覧会概要

初期鍋島から後期鍋島にいたる色絵・染付・青磁の数々

意匠と技法の極致といえる盛期鍋島を含む118件

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大阪市立美術館では、故田原一繁氏と元子夫人の収集による118件にのぼる鍋島焼をご寄贈賜り、その記念として初期鍋島から後期鍋島にいたる色絵・染付・青磁の名作の数々を紹介いたします。鍋島焼は、その和様の意匠と精緻な技法が特筆され、特に元禄期の作例をはじめとした盛期鍋島の色絵はその極致といえるでしょう。

主な展示作品

色絵 唐花文変形皿 (いろえ からはなもんへんけいざら)

佐賀県鍋島藩窯・初期鍋島、松ヶ谷手 江戸時代〔17世紀中頃〕  本館蔵(田原コレクション)

中央に大きな唐花を配置し、四つの葉文を蔓文で囲む変形皿。高台は糸切細工で成形して底部にはハリ支えもない。外面が無文で内面を色釉で塗り込めた「松ヶ谷手」に分類される作品。松ヶ谷手の帰属は何度か変転し、有田町の猿川窯や大川内山の日峰社下窯から破片が出土するが、本器は、蔓文内の連珠には染付の縁取りがあり、高台が高く、畳付は丁寧な三面調整があるため、鍋島藩の献上品と考えられている。

色絵薄瑠璃 唐花唐草文菱形皿 (いろえうするり からはなからくさもんひしがたざら)

佐賀県鍋島藩窯・初期鍋島、日峰社下窯 江戸時代〔17世紀中頃〕  本館蔵(田原コレクション)

平面形を菱形に型作りした変形皿で、成形は糸切り細工。見込を薄い瑠璃釉で充填し、長辺の四方を掛け残して長小判形の窓を開け、赤の輪郭線をもつ花唐草文を描いている。外側面は長辺にそって日峯社下窯の出土品と同様な菊花唐草文を、高台には鋸歯文を染付で表す。薄瑠璃と赤で縁取りされた花唐草文との色相が、柔和で鮮麗な印象を与える。佐賀県立九州陶磁文化館に同工品が所蔵される。

色絵 毘沙門亀甲桐文皿 (いろえ びしゃもんきっこうきりもんさら)

佐賀県鍋島藩窯・盛期鍋島 江戸時代〔17末~18世紀初頭〕 本館蔵(田原コレクション)

幾何学文様を題材とした鍋島藩窯の典型作。亀甲形をなす編み目の文様で内面全体を埋める。毘沙門天の身につけている甲冑の文様に由来することから、この文様を毘沙門亀甲文とも呼ぶが、濃く太い染付で輪郭を縁取り、その中を薄瑠璃や黄釉、赤の毘沙門亀甲文で埋め、小さな桐文・葉文・花卉文を描く。外側面は花唐草文を3組配し、高台は櫛目文である。東京・戸栗美術館などに同意匠の作品が所蔵される。

色絵 桜花柴束文皿 (いろえ おうかさいそくもんさら)

佐賀県鍋島藩窯・盛期鍋島 江戸時代〔17末~18世紀初頭〕  本館蔵(田原コレクション)

盛期の色鍋島の典型的な七寸皿。内面は束ねた柴を染付で、桜の花の折枝散文を緑・黄・赤の色絵で表す。柴と桜という特異な取り合わせを見事な画面構成によって秀逸に見せるが、この組合せの文様は鍋島藩窯の作品にしか登場せず、おそらくは物語の一場面の抜き出しと考えられるものの、その意味するところは明らかではない。外側面は七宝結文3組を、高台は櫛目文をそれぞれ染付で表す。

色絵 松竹梅図皿 (いろえ しょうちくばいずさら)

佐賀県鍋島藩窯・盛期鍋島 江戸時代〔18世紀前葉〕   本館蔵(田原コレクション)

皿内面の下三分の一の所に横線を引き、薄瑠璃でうめて水平線を示しているが、同時に松竹梅との遠近も表している。左に松樹を染付で、右に竹を染付と緑・黄で表すが、竹の一本は中央部を水平に横断して松樹より近景に描く。一番手前が染付と赤の梅樹であり、場所による色相のコントラストが印象深い。外側面には牡丹折枝文(カニ牡丹文と通称されるものの先行例)を3組、高台は櫛目文を染付で表す。

青磁色絵 山帰莱図縁皿 (せいじいろえ さんきらいずふちざら)

佐賀県鍋島藩窯・盛期鍋島 江戸時代〔18世紀前葉〕   本館蔵(田原コレクション)

青磁釉を厚く施し、赤・緑・黄の色釉で山帰莱を描いた七寸の縁皿。山帰莱はユリ科の多年生の蔓性灌木だが、図様にはトゲがあるのでサルトリイバラと見るべきであろう。葉には緑と黄を施すが、縁取りはなく、線脈を針描して釉薬を落とす。茎には赤の縁取りがあって中に薄くやや黄ばんだ赤を充填し、トゲを描く。先端には赤で塗りつぶした粒状の実と肥痩のある線で蔓を表す。青磁色絵の優品である。

色絵 万年青図縁皿 (いろえ おもとずふちざら)

佐賀県鍋島藩窯・後期鍋島 江戸時代・文久3年(1863)箱書   本館蔵(田原コレクション )

ユリ科の観葉植物である万年青を描いた五寸皿。漢名の万年青は常緑多年草本からの命名で、和名の「おもと」の意味には諸説ある。土坡と葉を染付で、五つの液菓を赤で描く。文久3年 (1863) 在銘箱入りの作品の分かれであると箱書きに記される。外側面には五弁花の羊歯文が三方に配置され、高台には櫛目文が一周する。この羊歯文様は幕末~明治初期の新文様で、六弁花羊歯文から羊歯繋文へと変化する。

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